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2016/06/14

連載4「介護保険における鍼灸マッサージの可能性」

連載4「介護保険における鍼灸マッサージの可能性」
    「介護保険に携わっての喜び」No2
 今回登場する人物はMさんという女性です。
 さて、振り返ればMさんが初来所されたのが2002年(平成14年)7月3
1日水曜日のことでした。以来12年と約8ケ月、昨年1月からの入院を除いて
はほとんど休まず、暑い日も寒い日も週に1ないし2回、よくぞ続けて来られた
ものだと思います。更に、特筆すべきは、ずっと要支援を維持されたことです。
 来所のきっかけは、圧迫骨折で2ケ月間N病院に入院されたことからです。介
護支援専門員のTさんから、当センターを紹介されてMさんの通所が始まりまし
た。
 当初は朝8時過ぎにお見えでした。そして、早朝に移動したこともあって、よ
く不整脈と咳が出て、それを鎮めるためにお薬を飲んでいました。しかし、それ
も3年も経つと、これらの症状が不思議と出なくなりました。これはやはりきち
んと治療に通った成果だと思います。
 また、Mさんは若い頃はすらりとした当時流行りの8頭身美人でした。それが、
年と共に骨粗鬆症になり、更に圧迫骨折を起こしてからはすっかり円背となりま
した。このような脊椎変形症のために、、よく肋間神経痛を発していました。し
かし、これも鍼治療が良く効いて、痛みが早く取れるので、徐々に鍼に対する信
頼も増してきました。そして、「私は鍼治療をしていなかったら、こんなに長く
元気ではいられなかったと思うは」と度々おっしゃって下さっていました。
 更に、Mさんは若い頃は文学少女だったらしく、少年少女小説を好んで読んで
いたと、ある日私に懐しそうに語ってくれました。そんなこともあってか、独立
ケアー・センターの月間新聞や、治療後に私が書く連絡帳は必ずといっていい程
読んでいて、時々その感想を聞かせせ下さり、これはどんなにか私の励みとなっ
たことかしれません。
しかし、さすがに85歳を過ぎる頃から病気がちになり、一昨年に入ると、誰も
がMさんの急な体力の衰えを心配するようになっていました。そんな矢先の出来
事が昨年の3月19日に起ったのです。その日の夕食後にMさんは急に苦しがり
だしました。そこで、急いで病院に運んだものの、治療の甲斐もなく、ご家族の
見護る中を、天国へと度立たれたそうです。
 介護保険の良い点は、費用負担が軽いためにMさんのように心がけ一つで毎週
通所して治療を受けられるというところにあります。もちろん真面目に通所して
もなかなか効果が上がらない例も沢山ありますが、少なくとも現状維持は出来ま
す。その上に、今日述べさせて頂きましたように、心の交流を通して、このよう
に良き思い出を沢山与えられたことは、私にとってお金には替えられない、大切
で感慨深い財産となっています。     2016年5月10日 梅木龍男